タガ王の伝説 THE STORY OF TAGA④
タガ王
彼の50隻ものproa【三角型の帆が付いた、沖へ出る時に使うチャモロ人のカヌー】をテニアンより出航させ、サイパンのラダ―ビーチへ着岸しました。
彼らは夜の間、休憩をとる事にしました。タガは結構大きな鼾をかきながら寝ていたので、自分でその鼾に驚いて目を覚ましました。
夜明け前に彼は妻に食べるものを準備するように言いつけました。
「起きろ!今日、私は大勢のサイパン人と戦いをするのだ。しっかりと腹ごしらえをして、体力を付けないとならん!!」
けれど、彼の妻はその場しのぎのベッドで寝がえりを打つだけでした。
タガは心配になりました。彼の妻はこれまでに一度だって、夜明け後に寝入る事などなかったからです。
「おい、どこか具合が悪いのか?!」
妻は微笑むと「いいえ、私は大丈夫です。でもここに来て、昨夜の星空の下、あなたが寝ている間に何が起こったのか、その目で見て下さい。」
タガは妻の側によると、驚きのあまり叫んでしまいました。
「一体どうした!!昨夜何があったと言うのだ!?なぜお前には頭が2つあるんだ?」
妻は静かに笑いながら言いました。
「私に二つの頭などありません。これはあなたの息子ですよ!!」
突如、チーフの心は幸せに満たされて歓喜に沸き上がり、全ての軍勢を呼び寄せ、我が息子の誕生を知らしめました。
「息子をyonanaiと命名する!これより一度テニアンへ戻り、祝いの宴に取りかかる。私は息子の誕生の間、すっかり寝入ってしまっていた。今日は決して弱さをみせられないので戦うのを止める事にする!」
すぐさま、全員が船に乗り込み、テニアンへと戻りました。その後、タガはサイパンへ二度と戻りませんでした。
yonanaiが生まれて、しばらくの後、タガの親戚が訪ねてやってきました。
いつも通り、強いチーフの演説が始まりました。
「私が一番強い!何でもできるぞ!皆、私の家族を見よ!この大きな家を!立派な私の軍隊、そして従順な召使達を!そして私の息子を!!!」
タガの兄弟は彼の話を聞き疲れていたので、別の話題を持ちかけました。
「さて、話は済んだだろう!どうだ、俺達の中で誰が一番強いか勝負をしてみようじゃないか!!」
タガは自分の強さを見せつける為のチャンスがやってきたと大いに喜びました。
彼は兄弟に警告しました。
「お前が負けるのは決まっている。俺の様に強い人間はここら辺には居ないんだ。この勝負もらったぞ。」
タガの兄弟はgalaide【カヌーのレース】のスキルに自信があったので、カヌー漕ぎの競争に決めました。いつも通り、彼は自分が意図も簡単に勝つ事を宣言しました。
兄弟は挑戦を挑みました。
「もしお前が俺に勝つ自信がそんなにあるのなら、1艘のカヌーだけを使う事にしよう!」兄弟達は同意しました。
彼らはテニアンとロタの中間の海でレースは始まりました。1艘のカヌーに背中合わせに乗った兄弟、タガはテニアンへ向かってパドルを漕ぎ、彼の兄弟はロタへ向かって漕ぎだしました。
何という光景でしょう!
2人の兄弟達が力の限りパドルを漕ぎ、それぞれが反対のゴールを目指して向かおうと必死です。しかし、どんなに彼らが強く、長く、パドルを漕いでいても、galaideは一向に、どちらの島にも近付く気配を見せません。
両者ともに全身全霊で一日がかりで漕いだにもかかわらず、2人の漕ぐ海水が大きな波となり、それぞれの浜辺に打ち寄せられるだけの結果となりました。
タガは次第に心配し始めました。
「信じられない。私の兄弟は私とほぼ互角の体力を持っているではないか!」
勝利の笑顔を見せながら、タガの兄弟は遂にチーフが彼の強さに互角に渡り合える人間を見つけたとこの時知りました。しかしその時何が起こったかに、2人の兄弟達はひどく驚きました。突然大きな音がしたかと思った途端に、弾けて大きな水飛沫が上がったのです!
カヌーが真二つに割れて、2人は海に投げ出されてしまいました。そこから2人はテニアンへ泳ぎながら帰りました。
その日を境に、タガは自分の強さを誇示する態度は一切慎みました。