グアム・サイパン 南洋諸島、太平洋に伝わる伝説
海洋民族として
太平洋の島々にすむ人々は、数万年前、人類がこの世界に発生して世界各地に広がった時に、ユーラシア大陸から渡ってきたと考えられています。
それ以来、この地域の先住民の文化を最も強く特色づけているのは、シングル・アウトリガー・タイプの航海カヌーであり、彼らはこれを用いて広範な交流を行っていました。
西洋、東洋の文明とは一線を画して独自の文明を築いていましたが、1521年にフェルディナンド・マゼランが世界1周航海中にこの島々を発見して立ち寄りました。
水も食料もなくなり、息も絶え絶えでたどり着いた彼らに、先住民は彼らが望むものをを与えて、その後、先住民達は船の中から自分たち欲しいと思うものを持って帰りました。
物々交換が原則の彼らにとっては、全く問題の無い取り引きでしたが、それを知らないマゼランたちスペイン人は彼らの事を泥棒と呼び、武力でそれを取り戻しました。マゼランは島々を「泥棒の島」と名付けています。
17世紀に入るとスペインは、サイパンを含むマリアナ地域の領有を勝手に宣言します。以後20世紀までこの地域は植民地政策の下、苦しい時代が続きます。
スペインによってグアムに集められたチャモロ民族は、1850年初頭サイパンや他のマリアナ諸島へ戻る努力を始めました。
その頃から、ミクロネシアの両方の文化=カロリニアンとチャモロ=はそれぞれ融合してこれらの島々に分散したのです。
この二つの文化は、ある側面から見ると非常に似ています。例えば、双方ともに亡くなった人間も含めて「家族」を大変に重んじると言う事です。それは亡くなった家族の魂が、生きている者たちを助けることもあり、またはその逆に苦しめる事もある、と信じられているからです。
全てのものが魂の世界から作られてきたので、この世に存在する全てのものには魂が宿っていて、全ての事象に尊敬の念を持たなければならないと考えています。
それらの魂―スピリット達には多くの呼び名が存在します。ゴースト、タオタオモナ(taotaomo’na)、ホワイトレディ―そしてそれらはチャモロの世界だけではなく、カロリニアンの世界も同様です。
彼らの中にある伝説は、この事件以前のものがほとんどですが、次に紹介する「恋人岬の伝説」のようにスペイン統治の影響がある物語も数多くあります。
元来、彼らの文化の基本には自然崇拝であり、大自然に対する畏怖と感謝が信仰の中心にあり、それらから多くの言伝えや伝説が生まれています。
既にいくつかの伝説が紹介されていますが、グアムをはじめとしてサイパン・テニアン・ロタなどにはまだ知られていない伝説が多く存在します。それらを一つずつ紹介します。
伝説が言い伝えられていた時代、彼らの素朴で実直な生活文化をうかがい知る事ができます。
タオタオモナの伝説
グアム、サイパンなど島の住人は、「森にはタオタオモナが住んでいて、暗くなる時には森に近づいていはならない。」と言います。言葉だけではなく本当に皆そう信じてこの精霊を畏れています。
スペイン統治時代に生まれたと思われる伝説
The Legend of two Lovers' Point「恋人岬の伝説」
この伝説は、スペイン統治時代に過去から伝えられていた物語に、新しいストーリーが加えられて作られたと思われます。
<概要>
昔々、グアムにとても美しい乙女が住んでいました。
高慢なスペインの総督が乙女を自分のものにしようとしましたが、彼女には愛するチャモロの彼がいたのです。悲恋の恋に悩む二人は、タモン湾を見下ろす絶壁に立ち、長い髪を互いに結び合わせて海に身を投げました。
それ以来、この絶壁は「プンタン ドス アマンテス」「恋人岬」 と呼ばれるようになりました。